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       くたに 僧正遍照  
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   散りぬれば  のちはあくたに  なる花を  思ひ知らずも  惑ふてふかな
          
     
  • あくた ・・・ ゴミ (芥)
  • てふ ・・・ 蝶
  「のちはあ
クタニ」に題の「くたに」を詠みこんでいる。 「くたに」は 「苦胆」と書き、リンドウの一種かとされている。

  歌の内容は、
散ってしまえばその後はゴミとなることも知らず、それに惑わされている蝶の姿よ、ということ。 「てふ」は 「と言ふ」の略とする説もある。ひらひらと舞う蝶を 「惑ふ」と見ると歌のイメージがしっかりするので 「蝶」と見てよいだろう。文法的な考察は「古今和歌集全評釈  補訂版」 
(1987 竹岡正夫 右文書院 ISBN 4-8421-9605-X)
 に詳しく、そこでの結論も 「蝶」となっている。なお、「と言ふ」という意味の 「てふ」を使った歌の一覧は 36番の歌のページを参照。

  また、この歌の "思ひ知らずも 惑ふてふかな" という部分は、仮名序にある「かぞへ歌」の例の「咲く花に 思ひつくみの あぢきなさ」という歌を連想させる。 「思ひ知る」という言葉を使った歌の一覧は 185番の歌のページを参照。古今和歌集の配列で言えば、しばらく題と歌の内容が関係しない歌が続いていたが、この遍照の歌でまた題が歌に沿うかたちに戻っている。

 
( 2001/10/30 )   
(改 2004/03/09 )   
 
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