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       題しらず 読人知らず  
402   
   かきくらし  ことはふらなむ  春雨に  濡衣きせて  君をとどめむ
          
     
  • かきくらし ・・・ 暗くして
  • ことはふらなむ ・・・ どうせなら降って欲しい
  "ことはふらなむ" の「ことは」という部分がわかりづらいが、82番の仁和帝(=光孝天皇)の歌など四首に出てくる 「ことならば」の 「こと」と同じで、「同じことなら、どうせなら」という意味とされる。
 "濡衣きせて" は現在の 「濡れ衣を着せる」という言葉と同じ意味で、それのせいにする、ということである。つまり、
空が暗くなりどうせなら雨が降って欲しい、そうすれば春雨のせいにしてあなたを留めましょう、という歌である。

  
「古今和歌集全評釈  補訂版 」 (1987 竹岡正夫 右文書院 ISBN 4-8421-9605-X) でも「古今和歌集全評釈(中)」 (1998 片桐洋一  講談社 ISBN4-06-205980-0) でも、本来は濡らすものである春雨に 「濡衣」を着せると言っているのが面白い、としている。微妙なところであるが、発想としては 「留めたい−雨が降りそう−雨に濡れる衣−濡衣」という流れで、それをうまくまとめて歌としている。離別歌もこのあたりになると恋歌と変わらない。

  この歌と同じ 「かきくらし」ではじまる歌には次の忠岑の歌があるが、775番の歌の「かきくもり 雨も降らなむ」という部分もほぼ同じような意味であろう。

 
566   
   かきくらし   降る白雪の  下ぎえに  消えて物思ふ  ころにもあるかな
     
        「春雨」を詠った歌の一覧は 88番の歌のページを参照。

 
( 2001/11/28 )   
(改 2004/02/26 )   
 
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