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       題しらず 読人知らず  
403   
   しひて行く  人をとどめむ  桜花  いづれを道と  惑ふまで散れ
          
        止めても行ってしまう人を留めたい、桜花よ、帰る道がわからなくなるほどに散ってほしい、という歌。歌の内容は 394番の遍照の「花のまぎれに 君とまるべく」という歌とほとんど同じだが、この歌はシンプルな分、恋歌の風味がある。

    "しひて行く" という表現を使った歌には、恋歌四の 739番に「しひて行く 駒のあし折れ 前の棚橋」というものもあり、いずれも悪い魔女の歌のような感じで面白い。 「しひて」という言葉を使った歌の一覧については 133番の歌のページを参照。この歌の一つ前には 「桜」ではなく 「春雨」を使った読人知らずの次の歌がある。

 
402   
   かきくらし  ことはふらなむ  春雨に   濡衣きせて  君をとどめむ  
     
        また、春つながりで言うと、春歌下には 「春霞」に象徴させて、ゆく春を惜しむ次の在原元方のような歌もある。

 
130   
   惜しめども  とどまらなくに   春霞  かへる道にし   たちぬと思へば
     

( 2001/10/24 )   
(改 2004/02/05 )   
 
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