Top  > 古今和歌集の部屋  > 巻六

       寛平の御時きさいの宮の歌合せのうた 壬生忠岑  
328   
   白雪の  降りてつもれる  山里は  住む人さへや  思ひ消ゆらむ
          
     
  • 思ひ消ゆ ・・・ 気がめいって元気がなくなる
  
雪が降り積もった山里は、そこに住む人さえ、雪が消えるように気持ちがめいってしまうのだろうか、という歌。この歌は一つ前の同じ忠岑の 327番の「入りにし人の おとづれもせぬ」と並べられているので、続きもののように見える。ただし、現存する 「寛平御時后宮歌合」では、 327番の歌はあるが、この歌は載っていない。

  問題は "降りてつもれる" と "思ひ消ゆらむ" との関係である。ここでの 「消ゆ」は 「雪に隠れる」という意味のようにも見えるが、「思ひ消ゆ」となっているので、「雪が(溶けて)消える」ことを指しているのだろう。 「雪が−積もった−山里」/「思ひが−消ゆる−人」の対比はわかりやすいが、それを 「人さへや」とつなげているところに何かバランスの悪さが感じられる。

  「さへや」という言葉を使った歌には次のようなものがある。 「さへ」を使った歌すべての一覧は 
122番の歌のページを参照。

 
     
328番    住む人さへや  思ひ消ゆらむ  壬生忠岑
559番    岸による浪  よるさへや  藤原敏行
766番    夢ぢにさへや  おひしげるらむ  読人知らず


 
        「古今和歌集全評釈(上)」 (1998 片桐洋一  講談社 ISBN4-06-205979-7) では 「思ひ」の 
「ひ」に 「火」が掛けられているという解釈も示されているが、続く 329番の躬恒の歌の 「思ひ消ゆらむ」と共に、やはり 「雪」つながりで作られた歌のように見える。

 
( 2001/11/20 )   
(改 2004/02/10 )   
 
前歌    戻る    次歌