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       奈良の京にまかれりける時にやどれりける所にてよめる 坂上是則  
325   
   み吉野の  山の白雪  つもるらし  ふるさと寒く  なりまさるなり
          
        吉野の山では今ごろ白雪が積もっているのだろう、この古都・奈良の都でも寒さが増している、という歌。詞書からこの歌の "ふるさと" は奈良の都を指していると思われる。

  321番に 「ふるさとは 吉野の山し 近ければ」という読人知らずの歌があり、是則の歌としては、百人一首にも採られている 332番の「吉野の里に 降れる白雪」という歌が有名だが、それらはいわばこの歌の 「太刀持ち」でしかない。言葉は易しく、意味は明らかで、その調べは祈りに近い。何でもない歌のように見えるが、この歌は、いくつかある古今和歌集の中の頂点の一つである。

  同じ是則の267番の「秋は深くも なりにけるかな」という歌も、この歌と似た調べを持っているので合わせて見ておきたい。

 
( 2001/09/21 )   
(改 2003/12/01 )   
 
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