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       題しらず 読人知らず  
320   
   この川に  もみぢ葉流る  奥山の  雪げの水ぞ  今まさるらし
          
     
  • 雪げ ・・・ 雪解け (雪消)
  
冬なのに川に紅葉が流れてきた、これは奥山に溜まっていた紅葉で、きっと今頃そこでは雪が溶けて水が増しているに違いない、という歌。驚きと納得が一つの歌の中にある。

  "雪げ" を 「雪どけ」とすると春に近い感じだが、ここでは一つ前の 319番の歌の流れから、単に雪が溶けることを指していると思われる。 「奥山の雪」を詠った歌としては、551番の読人知らずの「奥山の 菅の根しのぎ 降る雪の」という恋にからめた歌や、次の読人知らずの歌のように厭世にかけた歌などもある。

 
954   
   世の中の  うけくにあきぬ  奥山の   木の葉に降れる  雪やけなまし  
     
        また、この歌の主旨からははずれるが、"雪げ" に春を感じ、"今まさるらし" の 「今」を重く見れば、そこから連想されるのは、冬の間、氷に閉じ込められた秋の紅葉のイメージである。それが川の増水と共に溶け出し流れると考えると、この歌はまるで 4番の「こほれる涙 今やとくらむ」という二条の后の歌の別バージョンのようにも思えるが、やはりそれは考え過ぎであろう。

 
( 2001/10/04 )   
(改 2005/11/18 )   
 
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