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"菅" は「スガ」と読んで、カヤツリグサ科のスゲのことである。スゲには多くの種類があるがそれらの総称とされる。歌の意味は、奥山のスゲの根を押し伏して降り積もる雪が消えるように、この身も消えてしまうとでも言ってみようか、恋する気持ちが増してゆくために、ということ。ややわかりづらい歌である。万葉集・巻八1655にはこの歌に非常によく似た、
高山の 菅の葉しのぎ 降る雪の 消ぬとか言はも 恋の繁けく
という歌などがあり、契沖「古今余材抄」では「菅の根は書たかへたるにや」とし、賀茂真淵「古今和歌集打聴」もそれに賛同して、「今の本に菅の根とありてことわり聞えがたし葉を根にうつしあやまれるを伝へたるものか」と書いて、歌を 「菅の葉」に変えて載せている。万葉集・巻二十4454には次のような歌もあるので、これらが混ざり合ったとも考えられる。
高山の 巌に生ふる 菅の根の ねもころごろに 降り置く白雪
ただし「古今和歌集全評釈(中)」 (1998 片桐洋一 講談社 ISBN4-06-205980-0) を見る限り、「菅の葉」としている伝本はないようである。 「しげき恋」の歌の一覧については 550番の歌のページを参照。この歌は、恋歌一の最後の歌であると共に、542番から続いた四季シリーズの終わりでもある。
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