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       これさだのみこの家の歌合せによめる 藤原敏行  
257   
   白露の  色はひとつを  いかにして  秋の木の葉を  ちぢに染むらむ
          
     
  • ちぢ ・・・ さまざまに (千々)
  
露は色々な色をしているわけではないのに、どうして秋の木の葉をさまざまな色に染めるのだろう、という歌である。「白露が木の葉を染める」という慣用的な表現に対して、その「白」から "色はひとつ" として、表裏をひっくり返しているような感じでもある。古今和歌集の配列の順から言えば、この敏行の歌の問いに対して、続く 258番や 259番の歌が答えているように配置されているが、それはこの敏行の歌側から見れば、大した答えになっておらず、問答としてはあまり面白味はない。

  また、"ひとつ" と "ちぢ" (千々)という言葉に着目してみると、193番に「月見れば ちぢにものこそ かなしけれ」という大江千里の歌があり、「ひとつ」と 「色いろ」の組み合わせでは秋歌上に次の読人知らずの歌がある。

 
245   
   緑なる  ひとつ 草とぞ  春は見し  秋は 色いろの   花にぞありける
     
        「変える」と 「変わる」の違いはあるが、「白−緑」/「露−草」/「木の葉−花」の対比は面白い。さらに 「白」と 「秋の木の葉」の組み合わせとしては、「寛平の御時きさいの宮の歌合」の時の次の藤原興風の歌がある。

 
301   
   白浪に    秋の木の葉の   浮かべるを  海人の流せる  舟かとぞ見る
     

( 2001/12/06 )   
(改 2003/11/17 )   
 
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