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       みなづきのつごもりの日よめる 凡河内躬恒  
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   夏と秋と  行きかふ空の  かよひぢは  かたへ涼しき  風や吹くらむ
          
     
  • かよひぢ ・・・ 通り路
  • かたへ ・・・ 片側 (片方)
  詞書にある「みなづきのつごもりの日」とは旧暦六月の末日。
夏が往き秋が来る空の路では、片方に涼しい風が吹いているのだろう、という歌で、夏の終わりの歌である。

  "かたへ" は、「片方へ」という方向を指すものではなく、一語の名詞で「片側」ということのようだが、具体的なイメージを固定するのは難しい。 「かよひぢ」という言葉を使った歌には 465番の在原滋春の「春霞 なかしかよひぢ なかりせば」という歌や、632番の在原業平の「人知れぬ 我がかよひぢの 関守は」という歌があるが、この躬恒の「空のかよひぢ」は、559番の藤原敏行の「夢のかよひぢ」と、872番の良岑宗貞(=僧正遍照)の「雲のかよひぢ」と並んで、古今和歌集の三大通路と言ってよいだろう。

  「通る」ということでは、季節を冬と春の間に移して、この歌を矮小化したようなものに次の清原深養父の誹諧歌がある。

 
1021   
   冬ながら  春のとなりの  近ければ  中垣よりぞ  花は散りける
     

( 2001/11/15 )   
(改 2004/03/11 )   
 
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