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       題しらず 読人知らず  
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   宵の間に  いでて入りぬる  三日月の  われて物思ふ  ころにもあるかな
          
     
  • 宵の間 ・・・ 日没後のそう時間が経っていない間
  
宵の間に現れて早く沈む三日月の姿のように、心が割れてしまったような気持ちで物思いにふけるこの頃である、という歌。

  「でてりぬる」という部分が少しひっかかるが、その後の "われて" という口ぶりに合っているような気もする。 "われて" という言葉のニュアンスはわかりづらく、「三日月」とあるので、(完全な状態ではなく)片割れになって、ということと思われる。シェル・シルヴァスタインの「ぼくを探しに」("The Missing Piece": Shel Silverstein 1976)という絵本にあるような 「欠けた」イメージか。

  「宵の間」ではじまる他の歌としては、561番に「宵の間も はかなく見ゆる 夏虫に」という友則の歌があり、「ころにもあるかな」と結ばれている歌としては、566番に「消えて物思ふ ころにもあるかな」という忠岑の歌がある。

 
( 2001/10/17 )   
(改 2004/02/19 )   
 
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