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       寛平の御時きさいの宮の歌合せのうた 読人知らず  
159   
   去年の夏  鳴きふるしてし  郭公  それかあらぬか  声のかはらぬ
          
        去年の夏、さんざん鳴いていたあのホトトギスなのかどうかはわからないが、声も変わらず鳴いているよ、という歌。

  137番の「今も鳴かなむ 去年のふる声」という部分に通じるものがあり、昔と同じ声で鳴くというホトトギスの歌としては、144番の素性の「声ばかりこそ 昔なりけれ」という歌や 163番の忠岑の「昔べや 今も恋しき 郭公」という歌などがある。さらに「ここらの年を あかずもあるかな」という 359番の藤原定国の四十の賀の際の屏風絵の歌も(絵の中の鳥であるが)やはりこの歌との類似が感じられる。

  この歌は 「声が変わらないなあ」と言うだけで 「だからどうなのだ」ということを述べていないので、漠然としていて掴みどころがなく、それが逆に味になっている。夜中三時に遠くで聞こえるゴッドファーザーの愛のテーマという感じか。

 
( 2001/12/06 )   
(改 2003/10/30 )   
 
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