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       はやくすみける所にてほととぎすの鳴きけるを聞きてよめる 壬生忠岑  
163   
   昔べや  今も恋しき  郭公  ふるさとにしも  鳴きてきつらむ
          
     
  • 昔べ ・・・ 昔 (昔方)
  
昔が今も恋しいのか、ホトトギスはこの 「ふるさと」にも来て鳴いている、という歌。詞書は、忠岑がかつて住んだ場所でホトトギスの声を聞く、ということなので、何故 「ふるさと」にいるホトトギスを
 "鳴きてきつらむ" などと言っているのか、来たのは忠岑の方でホトトギスではないのではないか、と見えてわかりづらい。

  これは 「ふるさと」とホトトギスをセットで考えてしまうからで、この歌では、147番の歌の「なが鳴く里の  あまたあれば」のように里を飛び巡るホトトギスというイメージが必要である。 「他にも行き場はあるだろうに何故わざわざ」という気持ちが "ふるさとにしも" という言葉に込められている。

  つまり、もう何も見るべきもののない 「ふるさと」、その場所に作者も来た、ホトトギスも来た、お前も自分と同じで昔が恋しいのか、という歌である。

 
( 2001/12/11 )   
(改 2003/10/31 )   
 
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