Top  > 古今和歌集の部屋  > 巻三

       題しらず 読人知らず  
148   
   思ひいづる  ときはの山の  郭公  唐紅の  ふりいでてぞ鳴く
          
        歌の意味は、昔を思い出す時、ホトトギスは声を紅に染めるようにけたたましく鳴く、ということで、「ときは」は 「常磐」と 「時は」を掛けている。同じ出だしを持つ歌に、495番の 「岩つつじ」を使った恋歌がある。 「ときは山」は現在の京都府右京区御室双岡町の雙ヶ岡(ならびがおか)あたりのことだと言われている。

  "ふりいでて" の 「ふり出づ」は紅を水に溶かして布を染めること。 "唐紅" でそのイメージをサポートしている。また言葉としては 「思ひ出づ」「ふり出づ」と二つの 「出づ」を含んで、前に前に出ようとしているような感じで、158番の紀秋岑の「声ふりたてて  鳴く郭公」がおとなしく見えるほどである。紅のイメージは、ホトトギスが血を吐くように鳴く、ということからの発想だが、どうも前半と後半のつなぎが唐突すぎるような感じがする。最後の 「鳴く」を 「泣く」と見て全体がそこにかかり、「私はホトトギスのようにひどく泣く」という恋歌と見た方が自然に思える。

  「思ひ出づ」とその名詞である 「思ひ出(おもひで・おもひいで)」いう言葉とを使った歌には次のようなものがある。

 
     
48番    恋しき時の  思ひ出にせむ  読人知らず
148番    思ひいづる  ときはの山の 郭公  読人知らず
346番    とどめおきては  思ひ出にせよ  読人知らず
495番    思ひいづる  ときはの山の 岩つつじ  読人知らず
643番    思ひいづる  消えてかなしき  大江千里
735番    思ひいで  恋しき時は 初雁の  大友黒主
871番    神世のことも  思ひいづらめ  在原業平


 
        「紅」を詠った歌の一覧は 723番の歌のページを参照。

 
( 2001/11/28 )   
(改 2004/03/09 )   
 
前歌    戻る    次歌