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       紀の利貞が阿波の介にまかりける時に、むまのはなむけせむとて、けふといひおくれりける時に、ここかしこにまかりありきて夜ふくるまで見えざりければつかはしける 在原業平  
969   
   今ぞ知る  苦しきものと  人待たむ  里をばかれず  問ふべかりけり
          
     
  • かれず ・・・ 頻繁に (離る:かる)
  詞書は 「紀利貞が阿波の国司の次官に任命された時、今日送別会をしようと言っておいたのに、利貞があちこちに挨拶に行っていて、夜更けになってもやって来ないので送った」歌ということ。ただ、この内容については、
「古今和歌集全評釈(下)」 (1998 片桐洋一  講談社 ISBN4-06-208753-7) にも指摘があるように、利貞の阿波介就任が 881年とされるのに対し、業平の死が880年の五月二十八日であるという問題がある。

  歌の内容は、
人を待つことがこれほど苦しいとは今やっとわかった、待つ人のいる里をもっと足しげく通うべきだったよ、ということ。 「枯る」に 「離る」をかけた 338番の「冬草の 枯れにし人は おとづれもせず」という躬恒の歌が思い出される。 「離る(かる)」という言葉を使った歌の一覧については 803番の歌のページを、「べかりけり」という言葉を使った歌の一覧については 40番の歌のページを参照。 また、この歌は業平が紀利貞を送るという設定になっているが、逆に利貞が(「藤原のきよふ」を)送る側として詠んだ次のような離別歌もある。

 
369   
   今日別れ  明日はあふみと  思へども  夜やふけぬらむ  袖の露けき
     

( 2001/08/30 )   
(改 2004/03/05 )   
 
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