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       堀川のおほきおほいまうちぎみ、身まかりにける時に、深草の山にをさめてけるのちによみける 上野岑雄  
832   
   深草の  野辺の桜し  心あらば  今年ばかりは  墨染めに咲け
          
        一つ前の 831番の歌と同じく、堀川のおほきおほいまうちぎみ=藤原基経が 891年一月に亡くなった時のもので、文字通り、深草の野辺の桜よ、心があるなら、今年ばかりは墨染めの色でに咲け、という歌。わかりやすく言葉に勢いのある歌である。

  作者の上野岑雄(かむつけのみねを)の歌は、古今和歌集の中でこれ一つだけであり、その生涯は生没年を含めて不明である。

  「墨染め」という言葉が出てくる歌は、以下の忠岑と読人知らずの歌の二つの他に、1001番の長歌でも「墨染めの  夕べになれば」というものがある。

 
843   
   墨染めの   君が袂は  雲なれや  絶えず涙の  雨とのみ降る
     
844   
   あしひきの  山辺に今は  墨染めの   衣の袖は  ひる時もなし
     
        また、「心あらば」という言葉を使った歌には 145番に「夏山に 鳴く郭公 心あらば」という読人知らずの歌がある。

 
( 2001/09/05 )   
(改 2004/01/25 )   
 
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