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       題しらず 読人知らず  
730   
   めづらしき  人を見むとや  しかもせぬ  我が下紐の  とけ渡るらむ
          
     
  • しかもせぬ ・・・ そうしようともせずに、自然に
  
たまにしか逢えない人に逢いたいのでしょうか、自分で解いたわけでもないのに、私の下紐は解けて待ち続けているようです、という歌。

  「下紐が解けると逢いたい相手に逢える前兆」ということをベースにしているが、もうほとんど来てくれない相手に対して、「下紐」がお待ちしているのですが...という言い方をしている歌である。
773番の読人知らずの「今しはと わびにしものを ささがにの」という歌と感じが似ている。 また、「紐が解ける」ことを詠った歌には、次のような因幡の歌もある。

 
808   
   あひ見ぬも  憂きも我が身の  唐衣  思ひ知らずも  とくる紐かな  
     
        この因幡の歌の 「思ひ知らずも」は、 "しかもせぬ"  と似ているが、歌全体の感じからすると指している意味は微妙に異なるようである。 "しかもせぬ"  というこの歌の方には 「めづらしき」と皮肉を言えるだけの心の余裕がまだあり、「思ひ知らずも」の方には 「このバカな下紐は」というような身を責めるようなきつさが感じられる。

  「しかも」という言葉を使った歌の一覧は 94番の歌のページを参照。

 
( 2001/11/05 )   
(改 2004/01/30 )   
 
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