Top  > 古今和歌集の部屋  > 巻十三

       題しらず 読人知らず  
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   君が名も  我が名も立てじ  難波なる  みつとも言ふな  あひきとも言はじ
          
        「難波の御津(みつ:あるいは三津)」に 「見つ」を掛け、「網引き(あびき:=地引き網を引くこと)」に「逢ひき」を掛けて、あなたの噂も私の噂も立てまい、だから私を見たとも言うな、私も逢ったとは言わないから、という歌。つながりのある駄洒落で流した、なめらかな感じのする歌である。

  「難波の御津」は、973番と 974番の贈答歌にも出てくる。 「御津(三津)」の正確な位置は不明だが、現在の大阪府大阪市中央区あたりと言われている。また、「網引き(あびき)」という言葉は、古今和歌集の他の歌には見られない。万葉集では次のような歌で使われている。

[巻三238]       大宮の 内まで聞こゆ 網引すと 網子(あこ)調(ととの)ふる 海人の呼び声
[巻四577]       我が衣 人にな著(き)せそ 網引する 難波壮士(をとこ)の 手には触るとも
[巻七1187]     網引する 海子(あま)とか見らむ 飽(あく)の浦の 清き荒磯(ありそ)を
                      見に来し我れを
[巻十一2646]  住吉(すみのえ)の 津守(つもり)網引の うけの緒の 浮かれか行かむ
                      恋ひつつあらずは

 
( 2001/11/15 )   
(改 2003/10/29 )   
 
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