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       題しらず 読人知らず  
509   
   伊勢の海に  釣りする海人の  うけなれや  心ひとつを  定めかねつる
          
     
  • うけ ・・・ ウキ
  
まるで伊勢の海人のウキのように、この心は揺らいでどうにもしっかりとした気持ちが持てない、という歌。 「心ひとつ」という表現は、230番の藤原時平の女郎花の歌にも 「心ひとつを 誰によすらむ」として出てくる。この歌では、自分の一つしかない心なのに、心はもうあの人と決めているのに、という感じか。それが確かな手ごたえがないまま、人の噂などに一喜一憂している様子を、波間に漂うウキに譬えていると考えられる。 「〜なれや」という言葉を使った歌の一覧は 225番の歌のページを参照。

  続く次の歌も 「伊勢の海」を使ったもので、不安から苦しみへと続くように配置されている。

 
510   
   伊勢の海の   海人の釣り縄  うちはへて  くるしとのみや  思ひわたらむ
     
        また、"定めかねつる" の「かねつる」は 「かね+つる」で、「〜できない」というニュアンスを表す接尾語「かぬ」の連用形+完了の助動詞「つ」の連体形である。 この 「かぬ」が使われている歌の一覧は 491番の歌のページを参照。

 
( 2001/11/27 )   
(改 2004/02/15 )   
 
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