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       はくわかう 読人知らず  
464   
   花ごとに  あかず散らしし  風なれば  いくそばく我が  憂しとかは思ふ
          
     
  • いくそばく ・・・ 数多く (幾十許)
  「いくそ
バク ワガウしとかはおもふ」という部分に題が詠み込まれている。 「はくわかう(百和香)」とは、色々な香料を調合して作られた中国の 「香(こう)」のことと言われている。

  歌の意味としては、
花という花をことごとく散らした風なので、それを幾度、私は嫌なものだと思っていることか、ということ。ここでは言葉の流れから、 "あかず" を 「風が一つだけの花では満足せずに」としたが、一般的には、それを作者の気持ちとし 「自分が満足するまで見ていないのに」と解釈されるの普通のようである。いずれにせよ、 "花ごとに" 風が散らした回数だけ、嫌な思いをした、ということで 「風」を恨んだ歌である。香りは風と関係し、また「和香」の 「百」が "いくそばく" という言葉とからんでいるように見える。

  古今和歌集の中では、この歌の他には薫物が具体的に取り上げられているものはないが、衣服への 「移り香」として以下のような歌で詠われている。

 
33   
   色よりも  香こそ あはれと  思ほゆれ  たが袖ふれし   宿の梅ぞも
     
139   
   五月待つ  花橘の  香をかげば   昔の人の  袖の香 ぞする
     
876   
   蝉の羽の  夜の衣は  薄けれど  移り香 濃くも  匂ひぬるかな  
     
        「あかず」という言葉を使った歌の一覧は 157番の歌のページを参照。

 
( 2001/12/18 )   
(改 2004/02/11 )   
 
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