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       からさき 阿保経覧  
458   
   かの方に  いつから先に  わたりけむ  浪ぢはあとも  残らざりけり
          
        作者の阿保経覧(あぼのつねみ)は、907年一月に従五位下、912年一月没。古今和歌集にはこの一首しか採られていない。この歌は一つ後の伊勢の歌と同じく、「からさき」(唐崎: 琵琶湖沿岸の地名・現在の滋賀県大津市唐崎)を詠みこんだもので、「いつカラサキに」という部分に題が含まれている。

  歌の内容は、
あちら側(対岸)にいつの間に先に渡ったのだろう、浪の上には舟の通った痕跡も残っていない、ということ。置いてきぼりをくったのを、相手が瞬間移動したかのように言った軽口のようにも見える。イメージとしては、この歌は恋歌一にある次の藤原勝臣の歌と響き合う。

 
472   
   白浪の    あとなき方に   行く舟も  風ぞたよりの  しるべなりける
     
        「方」という言葉を使った歌の一覧は 201番の歌のページを参照。

 
( 2001/06/28 )   
(改 2004/03/09 )   
 
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