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       題しらず 読人知らず  
322   
   我が宿は  雪降りしきて  道もなし  踏みわけてとふ  人しなければ
          
        我が家のまわりは、雪が一面に降り敷いて道もない、雪を踏み分けて訪れてくれる人もいないから、という歌である。 970番の「雪踏みわけて 君を見むとは」という業平の歌が思い出される。

  言葉の上から見ると、316番や 321番の歌では二回だった 「し」の繰り返しが、この歌では三回使用されており、この歌の秋バージョンとも言える 287番の歌の言葉の転がりのよさに、「し」で対抗しているようにも見える。

  この歌の "雪降りしきて" は、一般的には 「降り敷く」と解釈されている。 「降りしく」は 「降り頻く」(=絶え間なく降る)として使われることもあり、この歌でもどちらと見るかは微妙なところであるが、 "道もなし" 以降の続きかたを見ると「敷く」の方が自然であるように思える。

  また 「雪で道がなくなる」という状況は、次の躬恒と忠岑の歌でも詠われているが、そこではひねりが加えられており、それが逆に、それらの歌のベースにこの歌があることを感じさせる。

 
329   
   雪降りて    人もかよはぬ    道 なれや  あとはかもなく  思ひ消ゆらむ
     
327   
   み吉野の  山の 白雪    踏みわけて   入りにし人の  おとづれもせぬ  
     

( 2001/09/20 )   
(改 2003/12/01 )   
 
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