Top  > 古今和歌集の部屋  > 巻五

       二条のきさきの春宮の御息所と申しける時に、御屏風に竜田川にもみぢ流れたるかたをかけりけるを題にてよめる 素性法師  
293   
   もみぢ葉の  流れてとまる  みなとには  紅深き  浪や立つらむ
          
     
  • みなと ・・・ 河口
  • とまる ・・・ 停泊する (泊まる)
  詞書は「二条の后(=藤原高子)が東宮の御息所(=皇太子の母)と呼ばれていた頃、屏風絵に描かれている、竜田川に紅葉が流れている様子を題にして詠んだ」歌ということ。続く 294番の歌でも 「唐紅に」とあるところを見ると、よほど赤の印象が強い絵であったのであろう。

  
この川の下流、紅葉が流れて停泊する河口には、深い紅の浪が立つことでしょう、という歌。 250番の文屋康秀の「浪の花にぞ 秋なかりける」の逆を行った歌のようにも見え、301番の藤原興風の「海人の流せる舟」のような木の葉が集団で川を下って行き、「みなと=湊」にひしめいている様子と見ても面白いかもしれない。

  紅が深いということを詠った他の歌としては、次のような読人知らずの恋歌がある。

 
723   
   紅の   初花染めの  色深く   思ひし心  我忘れめや
     
        「紅」を詠った歌の一覧は、その 723番の歌のページを参照。

  また、作成時期の前後は確定できないものの、311番の貫之の「みなとや秋の とまりなるらむ」という歌は同じ竜田川の歌でもあり、この素性の歌との関連性が感じられる。

 
( 2001/09/27 )   
(改 2004/03/06 )   
 
前歌    戻る    次歌