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       題しらず 読人知らず  
281   
   佐保山の  ははそのもみぢ  散りぬべみ  夜さへ見よと  照らす月影
          
     
  • ははそ ・・・ 木の名前。ナラ、コナラ、ブナ、カシワなど諸説ある。 (柞)
  
佐保山の柞の黄葉(あるいは紅葉)が散ってしまいそうなので、夜も見なさいというように照らしている月である、という歌。

  "散りぬべみ" は「散り+ぬ+べ+み」で、「ぬ」は完了の助動詞「ぬ」の終止形、「べ」は推量の助動詞「べし」の語幹、それに理由を表わす接尾語の「み」がついたもの。同じ使い方は 642番の読人知らずの歌の「あけば君が名 立ちぬべみ」や、1001番の読人知らずの長歌の「色にいでば 人知りぬべみ」に見られる。

  また古今和歌集の配列で言えば、この 「散りぬべし」で並べて置かれた 282番の藤原関雄の「奥山の いはがきもみぢ 散りぬべし」と関連し、そこでの 「日の光」とこの歌の "照らす月影" が言葉上、対に見えるように配置されている。

 「さへ」を使った歌の一覧は 122番の歌のページを参照。

 
( 2001/11/13 )   
(改 2004/02/10 )   
 
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