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       仙宮に菊をわけて人のいたれるかたをよめる 素性法師  
273   
   濡れてほす  山路の菊の  露の間に  いつか千歳を  我はへにけむ
          
        この歌は 272番の歌の詞書を引き継ぎ、891年頃催されたといわれる 「寛平御時菊合」の時の歌である。詞書は「仙人の住む場所に菊を分けて人が辿りつくという模型を詠んだ」歌ということ。 「かた」は 「形」あるいは 「型」で州浜上のものを指している。その中の人物の立場で詠んだ歌である。

  歌の内容は、
衣服が山路の菊の露に濡れて、それを干すのはわずかな時間のはずなのに、いつの間に自分は一千年も時を経てしまったのだろう、ということ。中国の故事で長寿を得るという 「菊の露」と、ほんの少しのあいだという "露の間" を掛けている。 "濡れてほす" という一言の中に千年が込められていると見ると面白い歌である。

  内容はまったく異なるが、この歌の出だしは、932番の坂上是則の「かりてほす 山田の稲の こきたれて」という歌を連想させる。

 
( 2001/11/06 )   
(改 2003/11/19 )   
 
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