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       題しらず 読人知らず  
123   
   山吹は  あやなな咲きそ  花見むと  植ゑけむ君が  今宵来なくに
          
     
  • あやな ・・・ 意味のない、理不尽な (あやなしの語幹)
  
意味もなく、山吹は咲いてはいけない、花を見ようと植えたあの人が今晩来ないのに、という歌。

  男が来るのを待つ女性の歌だが、山吹をメインに見て古今和歌集では春歌下に置かれている。一緒に見ようと花を植えた人が来ないのだから、綺麗に咲いてもしょうがないじゃないの、と山吹に理不尽なことを言っているのは自分の方、と折り返して言っているとも見ることできる。

  "な咲きそ" だけであれば、つぼみに対して「咲くな」と言っているのだろうが、その前に "あやな" と付いているので、すでに咲いたものを見て言っているようでもあり、微妙である。 「今日は来ない」から来る日まで咲かずにいて欲しい、自分と一緒に我慢して欲しい、と言っているのか、あるいは「今日は来ない」と自分は知ってあきらめているのに、それがわからず来ない人を出迎えるように咲いてしまっている花をたしなめているのか、どちらの意味にもとれる。

  理想としては、次の読人知らずの歌のように春雨に濡れた山吹の姿を共に見たいということなのだろう。

 
122   
   春雨に   匂へる色も  あかなくに  香さへなつかし  山吹の花
     
        この歌の "今宵来なくに" の 「なくに」は、「今宵来なくに−あやなな咲きそ」と倒置されていると見て、順接で 「来ないのだから」と接続されていると思われる。 「〜なくに」という言葉を使った歌の一覧は 19番の歌のページを参照。

  「あやな(し)」という言葉を使った歌の一覧は 477番の歌のページを参照。

 
( 2001/08/12 )   
(改 2004/01/12 )   
 
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