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       仁和のみかど、みこにおましましける時に人に若菜たまひける御うた 仁和帝  
21   
   君がため  春の野にいでて  若菜つむ  我が衣手に  雪は降りつつ
          
     
  • 衣手 ・・・ 袖
  詞書にある「仁和のみかど、みこにおましましける時」とは、光孝天皇(=仁和帝)がまだ時康親王であった頃ということだが、光孝天皇は即位したのが五十五歳(884年)であるため、若い頃の歌であるかどうかはわからない。光孝天皇は宇多天皇の父である。

  
あなたのために春の野に出て若菜を摘む、この衣の袖に雪が降りかかる、という歌。百人一首にも採られていて有名であり、特に "我が衣手に  雪は降りつつ" という後半の二句が賞賛されている。道具立てのよい歌という印象である。情景としては、二つ前の読人知らずの歌の「みやこは野辺の  若菜つみけり」と重なるものがある。その奥にある 「松の雪」と比べると "我が衣手に" 降る雪は春雨に近いものが感じられる。

 
19   
   み山には  松の雪 だに  消えなくに  みやこは 野辺の   若菜 つみけり
     
        よく読むとこの歌は 「若菜たまひける」歌というより 「我が衣手」の歌のように見える。衣手=袖なので、それが春の 「雪」の白さと合わさって、続く 22番の貫之の 「白妙の袖」につながってゆく。

 

( 2001/07/23 )   
(改 2003/10/10 )   
 
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