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       返し 読人知らず  
1008   
   春されば  野辺にまづ咲く  見れどあかぬ花  まひなしに  ただ名のるべき  花の名なれや
          
     
  • 春されば ・・・ 春になれば
  • まひなしに ・・・ お礼の贈り物なしに
  この歌は、一つ前の 1007番の歌が 「そこにいる君、その白い花は何の花?」と聞いてきたことに対する答えである。歌の意味は、
これは春になれば真っ先に野に咲くいくら見ても飽きないすばらしい花で、何のお礼もなしには教えられるような花ではないよ、ということ。

  「アッカンベー」という感じであるが、Yes/Noよりも旋頭歌に対して同じ 「五・七・七/五・七・七」の旋頭歌の形式で返しているところが大切で、私はお前の言っていることが理解できるし、その形式も熟知しているのである、という意思表示になっている。この 「花」は女性を見立てたものであろうが、二つの歌のやり取りを見ると、商取引のはじまりという感じがする。 "春されば" と似た 「夕されば」という言葉を使っている歌の一覧については 317番の歌のページを参照。

  この歌の最後にある "花の名なれや" の 「なれや」は 「や」が反語を表している。その他の歌で使われている 「〜なれや」の一覧は 225番の歌のページを参照。

 
( 2001/10/22 )   
(改 2004/01/14 )   
 
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