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       返し 橘清樹  
655   
   泣き恋ふる  涙に袖の  そほちなば  脱ぎかへがてら  夜こそはきめ
          
     
  • そほち ・・・ 濡れる (濡つ)
  橘清樹(たちばなのきよき)は生年不詳、899年没。885年従五位下、896年阿波守。古今和歌集に採られているのはこの一首のみ。

  この歌は一つ前の 654番の歌が「密かに愛し合う二人のどちらかがもし恋死にをしたら、誰のためと世間に言って喪服を着ましょうか」と言っているのに対する返しで、
泣いて恋しがる涙で袖が濡れてしまったら、着替えるついでに夜こっそり喪服を着よう、という歌である。

  元の歌が 「誰によそへて」(=誰のためと言って)としているものを "夜こそはきめ" (=誰も見ていない夜に着よう)と答えているのだが、これが相手の気持ちをいなしたものであるかどうかは、歌だけからではわからない。 「とにかく今は秘密のままでいよう」というメッセージである。

 
( 2001/12/06 )   
(改 2004/01/05 )   
 
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