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       題しらず 紀貫之  
574   
   夢ぢにも  露や置くらむ  夜もすがら  かよへる袖の  ひちてかわかぬ
          
     
  • 夜もすがら ・・・ 夜どおし
  • ひちて ・・・ 濡れて (漬つ)
  
夢路にも露は置くのだろうか、夜どおし通う袖が濡れて乾くことがない、という歌。本居宣長が「古今和歌集遠鏡」で 「ヒツタリトヌレテ今朝モカワカヌ」と訳しているように、起きて次の朝の歌と見るとわかりやすいが、 "置くらむ" 、" かよへる" という言葉に特に過去を表すものがないため、「古今和歌集全評釈  補訂版 」 (1987 竹岡正夫 右文書院 ISBN 4-8421-9605-X) で「両度聞書」の説としても紹介されている「かよへる袖もゆめの事也」という「夢の中での事がそのまま一首に詠まれている」歌として、「何ジャコリャ」という感じと見ておきたい。

  この歌から思い出されるものとしては、次の業平の歌や、「忘れ草」を詠った 766番と 801番の歌などがある。

 
622   
   秋の野に  笹わけし朝の  袖よりも   あはでこし夜ぞ  ひちまさりける  
     
        また、「夜すがら」と 「夢」ということを詠った歌には他に 526番の 「夜はすがらに 夢に見えつつ」という読人知らずの歌がある。

 
( 2001/11/21 )   
(改 2003/12/26 )   
 
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