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       りうたむのはな 紀友則  
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   我が宿の  花ふみしだく  とりうたむ  野はなければや  ここにしもくる
          
     
  • ふみしだく ・・・ 踏み散らす
  • おしなみ ・・・ おしなびかせて
  「と
リウタム ノハナければや」に題が入っている。 「竜胆(りうたむ)」とはリンドウのことで、我が家の庭の花を踏み散らす鳥を打とう、野に花がないからここに来るのだろう、という歌。 "うたむ" とは、石を投げる、あるいは棒などで打つことを指していると言われている。 この友則の歌はどことなく、次の仮名序にある 「かぞへ歌」の例を連想させる。

    咲く花に  思ひつくみの  あぢきなさ  身にいたづきの  いるも知らずて

  この歌では 「思ひつくみ−ツグミ(鳥の名前)」、「いたづき(苦労)−いたつき(先が平らになった矢じり)」、「入る−射る」を掛けて、「咲く花に気を引かれたこの身は空しいものだ、苦労の種が入ってくることも知らずにいた」ということと花の近くのツグミに矢が刺さるというイメージを重ねている。少し残酷な気もするが、マザーグース(Mother Goose)のクックロビン("Who killed Cock Robin?")のような話はどこにでもあるということか。

  ちなみに、弓で射るということを詠った歌としては、605番の貫之の「白真弓 おきふし夜は いこそ寝られね」という歌や次の躬恒の歌がある。

 
127   
   梓弓   春たちしより  年月の  いるがごとくも   思ほゆるかな
     

( 2001/10/19 )   
(改 2003/12/12 )   
 
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