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       東の方より京へまうでくとて、道にてよめる   
413   
   山かくす  春の霞ぞ  うらめしき  いづれみやこの  さかひなるらむ
          
        山を隠す春の霞がうらめしい、どこが都の境だろうか、という文字通りの歌。乙(おと)は生没年不明。壬生益成の娘とされている。古今和歌集に採られているのはこの一首のみ。

  東国から京に上ってくる途中、京にいよいよ近づいて、早く京を見たいと思うけれど霞がかかってよく見えない、という状況で「どこからが都の境界線なのか」と言っていることから、はじめて京に出てきたという感じが出ている。 "山かくす" とは言っているが、平地から見上げてというよりも、自分も別の山の途中にいて山間の景色を見ての歌という感じがする。

  この歌は羇旅歌に置かれているが、京へ上る「旅」を詠っているのはこの歌だけである。また、この歌も詞書に 「道にて」(=道中で)という言葉を使っているが、次の貫之の歌はその詞書に 「東へまかりける時、道にてよめる」となければ離別歌のようでもある。

 
415   
   糸による  ものならなくに  別れぢの  心細くも  思ほゆるかな
     
        「春霞」を詠った歌の一覧は 210番の歌のページを参照。

 
( 2001/12/05 )   
(改 2004/03/13 )   
 
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