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       志賀よりかへりける女どもの花山にいりて、藤の花のもとにたちよりてかへりけるに、よみておくりける 僧正遍照  
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   よそに見て  かへらむ人に  藤の花  はひまつはれよ  枝は折るとも
          
     
  • よそに ・・・ 離れて(あるいは、無関心に)
  詞書にある「志賀」とは現在の滋賀県大津市にあった 「志賀寺」のことを指し、「花山」とは遍照の寺の「元慶寺」(現在の京都府京都市山科区北花山河原町の 「華頂山 元慶寺」)のことを指す。

  
離れて見て、そのまま帰ろうとする人に、藤の花よ、這いまつわれ、枝が折れようとも、という歌。文字通りの歌だが、"よそに見て" の解釈は少し微妙である。

  詞書の「藤の花のもとにたちよりて」ということを強く見ると、場所的に 「離れて見て」というのは、合わないようにも思えるが、かといって、気持ち的に 「何の関心も持たずに」とするのもわざわざ 
「たちよりて」とあるのでおかしい。 「つれないそぶりで」帰る、ということなのであろう。

  また、「志賀よりかへりける」とあるところからすると、「志賀の桜(志賀寺)に比べると、花山の藤(元慶寺)はそんな扱いなのですか」と言いかけているようにも見える。普通は女性が男性に 「帰らないで」とすがる様子を、 "はひまつはれよ 枝は折るとも" として 「藤」で表して、「女ども」に提示した軽い歌であると思われる。

  「よそ」という言葉を使った歌の一覧は 37番の歌のページを参照。

 
( 2001/11/05 )   
(改 2004/02/24 )   
 
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