Top  > 古今和歌集の部屋  > 巻一

       題しらず 読人知らず  
28   
   ももちどり  さへづる春は  ものごとに  あらたまれども  我ぞふりゆく
          
        いろいろな鳥が囀る春は、いろいろな物が新しくなる季節だが、自分だけが歳をとって古くなってゆく、という歌である。 "ももちどり" は、古今伝授の三鳥の一つであり、「和歌秘伝鈔」 (1941 飯田季治 畝傍書房) では、「古今伝授」の本文として 「百千鳥」について次のような説を紹介している。
  • 百千鳥は春の鳥であり、ウグイスのことである。
  • ウグイスは他の鳥よりも早く鳴き始める。
  • そのため、百千の鳥の声を一つに集めているということで百千鳥と言うのである。
  • 藤原俊成の説によれば百舌鳥というのも同じくウグイスのことである。
  • 百舌は反舌とも言い、モズではなくウグイスなのである。
  • 月令には 「仲夏の月(五月)、鵙(モズ)鳴始、反舌無声」とある。
  • そしてその注釈には反舌は百舌鳥であると書いてある。
  知らない人が見れば 「多くの鳥」としか見えないものを 「ウグイス」と看破するところに「秘伝」の意味があるわけで、決して口外してははずかしいから秘しているわけではないようである。飯田氏はその評釈として 「百千鳥」はウグイスではなく、春の鳥に限らず 「諸々の鳥」という意味であるとしている。

  この歌と似たような内容の歌としては、在原元方の冬歌に次のようなものがある。

 
339   
   あらたまの   年の終りに  なるごとに  雪も 我が身も    ふりまさりつつ  
     
( 2001/10/22 )   
 
前歌    戻る    次歌